SNSを活用したインフルエンサーマーケティングは、いまや企業のブランディングや販促活動において欠かせない手法となりました。しかし、その普及に比例するように、ステルスマーケティング(通称:ステマ)に対する消費者の視線は厳しさを増しており、法規制の運用もかつてないほどに高度化しています。
特に2023年10月の景品表示法改正による「ステマ規制」の開始から数年が経過した2026年現在、企業が最も注意すべきは、単なるSNS投稿時の表記漏れだけではありません。インフルエンサーが作成した良質なコンテンツを、自社サイトや広告ランディングページ(LP)へ転載する際の、いわゆる「二次利用」に潜むリスクが浮き彫りになっています。
SNS上では適切にPR表記がなされていたとしても、自社サイトへ流用する過程でその表記を削ってしまう。あるいは「お客様の声」として第三者の自主的な意見を装って掲載する。こうした「無自覚なステマ」が、いま行政指導の大きな標的となっています。
ステマ(ステルスマーケティング)とは?2023年からの法規制を再確認

まず、実務的な議論に入る前に、ステルスマーケティングの定義と、現在の日本の法規制の骨組みについて改めて整理しておきましょう。
ステマとは、ステルス(Stealth=こっそり行う)とマーケティング(Marketing=宣伝活動)を組み合わせた造語です。英語圏ではアンダーカバー・マーケティング(Undercover Marketing)とも呼ばれ、消費者に広告であることを隠して、あたかも第三者が自主的な感想や推奨を行っているかのように見せかける手法を指します。
日本におけるステマの逆の言葉として、「ダイマ(ダイレクトマーケティング)」という言葉も定着しました。これは広告であることを堂々と明かした上で行う宣伝を指し、消費者の信頼を損なわない手法として再評価されています。
日本でステマが規制されるまでの背景と流れ
日本におけるステマ規制の歩みは、諸外国に比べると遅いものでした。アメリカ(FTC:連邦取引委員会)やイギリスでは、2000年代後半から既に厳格なガイドラインが存在していましたが、日本には長らくステマを直接取り締まる明確な法律がなく、いわば「ステマ天国」と揶揄される状況が続いていました。
潮目が変わったのは、SNSの爆発的な普及です。インフルエンサーによる不透明なPR投稿が相次ぎ、消費者の「騙された」という不満が蓄積。これを受けて消費者庁は、2022年に「ステルスマーケティングに関する検討会」を設置しました。
検討会では、全8回にわたる議論を通じて、ステマが消費者の「自主的かつ合理的な商品選択」を阻害するものであると結論付けられました。その結果、2023年10月1日より、景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)の「不当表示」としてステマが正式に指定されるに至ったのです。
2026年現在では、この規制開始から蓄積された多くの摘発事例や指導事例により、どのような行為が「アウト」で、どのような表記が「セーフ」なのか、その境界線がより具体的になっています。
ステマの定義:広告であることを隠す「欺瞞性」
ステマの本質的な問題は、その欺瞞性にあります。具体的には、大きく分けて以下の2つのタイプが存在します。
| 利益提供型 | なりすまし型 | |
| 発生する主な場所 | X(旧:Twitter)・Instagram・YouTubeなどの各種SNS
有名人が運営するブログ |
Amazon・楽天などの各種通販サイトの口コミ欄
匿名ブログ |
| ステマを行う主な人 | 芸能人やインフルエンサー | 企業の社員などの関係者 |
ステマは、大きく「利益提供型」「なりすまし型」の2種類に分類されます。インターネットショッピングが普及し始めた頃は「なりすまし型」が多く見られましたが、SNSの普及に伴って「利益提供型」のステマも見られるようになりました。いずれのケースも、消費者が「これは企業側の意見ではなく、自分と同じ一般消費者のリアルな声だ」と誤認してしまう点に法的な問題と炎上のリスクが潜んでいます。
とくに現在の法解釈では、「事業者が内容をコントロールしているにもかかわらず、それが第三者の自主的な意見に見える状態そのもの」が問題視されるため、SNSだけではなくブログの投稿やサイトの表示なども厳格に監視される傾向になりつつあります。
インフルエンサーマーケティングとの境界線
InstagramやTikTok、X(Twitter)などのSNSでインフルエンサーが商品を紹介している記事を見かけると、「これってステマ?」と身構えてしまう人もいるかもしれません。
インフルエンサーマーケティングとは、InstagramやX(Twitter)、最近ではYouTubeなどで多くのフォロワーや視聴者を抱えている人(=インフルエンサー)に広告を依頼して商品やサービスの宣伝をしてもらうマーケティング手法です。
通常のインフルエンサーマーケティングによる広告の場合、PRを依頼されたインフルエンサーは自分の投稿内に「企業からの依頼によるPR案件であること」を明記します。投稿内に記載する方もいますが、インフルエンサーの間では「#PR」といったハッシュタグを付けてアピールするのがメジャーとなっています。
FacebookとInstagramではステマ投稿を防ぐため、PR活動を行うための投稿(企業アカウントが自社の商品やサービスを紹介する場合は除く)には「ブランドコンテンツのタイアップ投稿タグ」を使うことが義務化されています。
参考:ブランドコンテンツポリシーについて | Instagramヘルプセンター
インフルエンサーのステマに対する意識
消費者庁の表示対策課が現役インフルエンサー300人に対して行ったアンケートの結果では、「広告主からステルスマーケティングを依頼された経験がある」と答えたインフルエンサーが41.0%、そのうち1度でもステマ広告の依頼を受けたことがあるインフルエンサーは45.7%と出ています。
ステルスマーケティングの依頼を受けたインフルエンサーの大半は、依頼を受けた理由について「ステルスマーケティングに対する理解が低かったから」という回答、次いで「広告であるということを隠すことが条件で報酬が貰える依頼だった」という回答が多く、企業側から強くステマ広告の依頼を出している様子も窺えます。
一方、企業からステマ広告依頼を持ちかけられた際「依頼を断った」と答えたインフルエンサーについては、その理由として
- ステマを行うとフォロワーの信頼を失う
- ステマは悪い事だと思っている
- ステマは自身のインフルエンサーとしてのブランドを失う行為だから
- フォロワーを騙しているようで申し訳ない
といった回答が上位にきており、インフルエンサーとしてプライドを持って仕事をしている方が多い傾向にあるという点もわかります。
実際インフルエンサーの中にはテレビで姿を見るような芸能人も多く含まれているため、白いイメージを壊すような事をしたくないと考える方も多いのではないかと考えられます。
参考:第1回 ステルスマーケティングに関する検討会(2022年9月16日) | 消費者庁 参考資料2「現役のインフルエンサーに対するアンケート結果」
【重要】景品表示法による「ステマ規制」のポイント
ステマ規制の核心は、消費者が商品を選ぶ際の判断基準を守ることにあります。
私たちは普段、広告だと分かれば「これは宣伝だから、少し良い部分を強調しているかも」と無意識に構えて情報をチェックします。しかし、広告であることを隠されると、それが純粋な一消費者の感想だと思い込み、警戒心を解いて受け入れてしまいます。こうした情報の受け取り方の違いが結果として信頼を裏切ることになるため制限されているのです。
ガイドラインでは、以下の二つの要件を満たす場合にステマと判定されます。
要件1:事業者が表示内容に関与していること
これは、いわゆる事業者の表示であるかどうかの判断です。対価の支払いや商品の無償提供があり、事業者が投稿内容を依頼・指示している実態があれば、たとえインフルエンサー自身の言葉であっても、法的には事業者の表示とみなされます。
要件2:一般消費者にとって事業者の表示だと判別困難であること
投稿の中にPRや提供といった文言がない場合はもちろん、記載があっても非常に小さな文字であったり、大量のハッシュタグの中に埋もれていたりするケースも判別困難として規制の対象になります。消費者が一目で広告だと理解できる状態を維持することが、実務上の大原則となります。
WOMJ(クチコミマーケティング協会)ガイドラインの遵守
法規制とあわせて、実務において指針となるのがWOMJ(クチコミマーケティング協会)のガイドラインです。2026年1月には最新の情勢に合わせたガイドラインの改訂が行われ、より透明性の高い情報発信が求められるようになりました。
このガイドラインでは、関係性の明示(PR表記など)の方法について、消費者の誤認を招かないための具体的なルールが定められています。景品表示法という法的義務に加え、業界基準であるWOMJガイドラインを遵守することが、企業のレピュテーション(評判)を守るための標準的な対応となっています。
参考:WOMJガイドライン | 一般社団法人クチコミマーケティング協会
なぜステマは「炎上」するのか?消費者が抱く心理的嫌悪
ステマが発覚した際、企業が受けるダメージは単なる法的制裁にとどまりません。SNS上での激しいバッシング、いわゆる「炎上」がブランドの息の根を止めることもあります。
なぜ消費者は、これほどまでにステマに対して強い拒絶反応を示すのでしょうか。
裏切られたという「騙された」心理
現代の消費者は、企業から発信される洗練された広告以上に、SNS上の「生の声」や「口コミ」を信頼しています。それは、投稿者が「自分たちと同じ目線で、良い点も悪い点も含めて本音を語ってくれている」と信じているからです。
しかし、その信頼していた投稿が、実は企業から金銭を受け取って書かされた「台本通りの宣伝」だったと知ったとき、消費者は個人的な「裏切り」を感じます。この「騙された」という心理的痛みが、強力な反発エネルギーとなり、拡散性の高いSNSで爆発するのです。
特に、普段からファンと密にコミュニケーションを取っているインフルエンサーであればあるほど、裏切りと見なされた際の落差は激しく、企業のみならずインフルエンサー本人への致命的なダメージとなります。
ブランドイメージへの長期的ダメージ
ステマによる炎上の恐ろしい点は、その記憶がインターネット上に長く残り続けることです。一度「嘘をつく企業」「消費者を操作しようとする企業」というレッテルを貼られると、その後にどれほど誠実なキャンペーンを展開しても、「これもステマではないか」という疑いの目で見られるようになります。
2026年の情報社会において、透明性は最大の資産です。ステマは、その資産を一瞬で浪費するだけでなく、マイナスの負債として将来にわたってブランドの足を引っ張り続けることになります。
【最新版】ステマによる炎上・行政指導の事例まとめ

過去の教訓を学ぶことは、炎上回避の第一歩です。ここでは、社会的な影響が大きかった事例から、2026年現在も教訓として語り継がれるケースを振り返ります。
芸能人・著名人が関与した事例
芸能人を起用したステマの代表例として、古くはペニーオークション事件が挙げられますが、より現代的なケースでは、テレビ局のアナウンサーが特定の美容室やクリニックをSNSで紹介し、その見返りに無料で施術を受けていた「ステマ疑惑」があります。
この事例が注目されたのは、金銭の受け渡しがなくても「無料提供」という利益供与があればステマに該当し得るという点です。著名人のリテラシー不足が、所属組織全体の社会的信用を揺るがす結果となりました。
参考:女子アナのステマ疑惑に揺れるフジテレビ グレーなステマの難しさ:専門家のイロメガネ(1/5 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン
SNSインフルエンサー・YouTuberの事例
TikTokやInstagramで数百万人のフォロワーを持つクリエイターが、広告主から指示を受けて作成した動画を、自身の「日常動画」のように投稿したケースが多く見られました。
特にTikTok Japanが、かつて特定のX(Twitter)インフルエンサーに報酬を支払い、特定の動画を拡散させていた事例では、プラットフォーム運営側自らがステマに関与していたとして厳しい批判を浴びました。これにより、プラットフォーム側の倫理観も問われる時代となっています。
参考:TikTokコンテンツをTwitterインフルエンサーに対価を支払って投稿依頼していた件に関するお詫び
参考:TikTok、ステマ疑惑について正式謝罪 「宣伝のつもりではなかった」|ITmedia
参考:TikTok、ステマ報酬7600万円…運営会社がインフルエンサー20人に支払い : 読売新聞オンライン
アニメ・ゲーム・映画の事例
エンターテインメント業界で最も有名なステマ炎上の一つが、映画「アナと雪の女王2」の感想漫画企画です。複数の漫画家が、ほぼ同時刻に、指定されたハッシュタグとともに絶賛の感想漫画を投稿したことで、その不自然なシンクロニシティを消費者が即座に見抜きました。公式が当初、ステマではないと強弁したことも炎上を加速させました。
結局、後にPR表記の漏れとして謝罪に追い込まれましたが、作品そのものの純粋な感動に泥を塗る結果となった点は、マーケティング担当者が深く反省すべき点です。
また、ソーシャルゲーム業界においては、作品の評価を人為的に操作しようとする行為がファンの強い反発を招いています。例えば、ブルーアーカイブ(ブルアカ)等のタイトルにおいて、プラットフォームの規約で禁止されている報酬付きのレビュー誘導(インセンティブを与えて高評価やレビューを促す行為)が問題視された事例があります。
これは、ユーザーの自発的な善意に基づくべき評価を、ゲーム内アイテムなどの対価によってコントロールしようとするものであり、実態を隠して行われれば広義のステルスマーケティングとみなされます。
ファンは作品を深く愛しているからこそ、運営による情報の不透明さや、プラットフォームのルールを軽視する姿勢に対して極めて敏感です。こうした「公正性」への疑念は、情報の信頼性を損なうだけでなく、熱心な課金ユーザーの離脱を招く致命的なリスクを孕んでいます。
参考:なぜ「アナ雪2のステマ騒動」は起きたのか 求められるキャスティング業者の「モラル」 | 災害・事件・裁判 | 東洋経済オンライン
参考:With the PC release of Blue Archive, developer Nexon appears to be breaking some Steam rules.
アパレル・サプリ・美容業界の事例
アパレルブランドが、人気のインスタグラマーに商品を「ギフティング(無料配布)」し、それを「自分で買ったお気に入り」として投稿させる手法は、長年蔓延していました。
しかし、2023年の規制以降、こうした「ギフティング発のステルス投稿」に対する監視が非常に厳しくなっています。
特にサプリメントや美容液など、効果効能が期待される商品においてステマが行われた場合、景品表示法だけではなく薬機法違反の疑いも加わり、行政指導のリスクが一段と上がります。
SNSは白でもサイトで黒?投稿の「流用」に潜むリスク
ここからが、2026年の実務において最も重要な議論です。SNS上での投稿は適切に管理していても、その後の「二次利用(流用)」で法に抵触する企業が後を絶ちません。
インフルエンサーが「#PR」と書いていても摘発される?
非常に多い盲点がこれです。インフルエンサーAさんが、自身のInstagramで「提供:B社」や「#PR」と明示して投稿したとします。この時点では、SNS上の投稿として適法です。
しかし、広告主であるB社が、この投稿の「映え」や「説得力」を気に入り、自社の公式サイトや通販LPにその画像を転載したとします。このとき、転載先のサイトで「#PR」の表記を意図的に削除したり、小さく目立たない位置に配置し直したりして、「多くのお客様にご満足いただいています」という文脈で掲載した場合、これはステマに該当する可能性が極めて高いのです。
なぜなら、自社サイトに掲載した時点で、それはインフルエンサーの個人の意見ではなく、「事業者が自社の販促のためにコントロールしている表示」となるからです。SNSで広告だと明かしていても、転載先でそれを隠せば、消費者はその内容が企業側の意向で編集されたものだと気づけません。
最新の行政指導(措置命令)事例から見える傾向
2024年から2025年にかけて、大手製薬会社や化粧品メーカーなどが、この「自社サイトへの転載時におけるPR表記漏れ」で相次いで行政指導を受けました。
消費者庁の判断基準(運用基準)では、事業者のサイトに第三者の投稿を引用する場合、それが事業者の依頼・関与に基づくものであるならば、その事実を明瞭に表示することを求めています。
特に「お客様の声」という見出しで、インフルエンサーの投稿を(PR表記を消して)並べる行為は、消費者の合理的な選択を阻害する「不当表示」の典型例として厳しくマークされています。
参考:ロート製薬が「ステマ広告」で景表法違反 消費者庁が措置命令を発出【2025年3月25日】 – 薬事法広告研究所
参考:大正製薬株式会社が「ステマ広告」で景表法違反 消費者庁が措置命令を発出【2024年11月14日】 – 薬事法広告研究所
摘発を未然に防ぐ「確約手続」への対応
2026年現在の景品表示法運用において、企業が知っておくべき重要な制度が「確約手続」です。
これは、ステマ規制違反などの疑いがある事業者に対し、消費者庁が措置命令(行政処分)を出す前に、事業者側から自発的な是正案(確約計画)を提出させ、それが認められれば処分や課徴金を免除するという制度です。
確約計画を認定してもらうためには、以下の要素が不可欠です。
- 違反の疑いがある行為を直ちに中止すること
- 今後、同様の違反を繰り返さないための社内体制を構築すること
- 消費者に対して、不当表示があった事実を周知徹底すること
万が一、社内のミスでステマに該当する表示が見つかった場合、行政の調査が入るのを待つのではなく、自ら早期に修正し、確約計画の枠組みを活用してブランドの毀損を最小限に抑えるリスクマネジメントが求められています。
ステマ炎上を防ぐための「実務的チェックリスト」

企業の広報やマーケティング担当者が実務においてステマのリスクを管理するためには、単にルールを暗記するだけでなく、その裏側にある消費者庁の判断基準を深く理解しておく必要があります。
まずは、日々の業務で直面しやすい具体的なシーンを例に、何が誠実なPR(セーフ)であり、何が炎上リスクを孕むステマ(アウト)に該当するのかを比較表で確認してみましょう。
| 項目 | セーフ(誠実なPR) | アウト(ステマ・炎上リスク) |
|---|---|---|
| SNS投稿時 | 目立つ位置に「#PR」や「提供:〇〇」を明記する | 大量のタグに埋もれさせる、または表記を一切行わない |
| 自社サイトへの流用 | 転載時も「PR投稿の引用」である旨を明確に記す | PR表記を意図的に消し、一般の口コミとして掲載する |
| 商品提供(ギフト) | 「提供品です」といった企業との関係性を添える | 自分で購入したかのように装い、自主的な推奨を装う |
| 万が一の炎上への備え | 監視ツールを用いて、批判が広がる前に検知・対応する | 放置した結果、深夜や休日に批判が爆発的に拡散する |
このように、ステマかどうかの境界線は、消費者が広告であることを一目で、かつ容易に判別できるかという点にあります。以下では、これらのポイントを踏まえた具体的な実務上の注意点について解説します。
ハッシュタグと関係性の明示ルール
広告活動を行う際、最も基本的かつ重要なのが関係性の明示です。具体的には「#PR」「#プロモーション」「#提供」といった文言を使用しますが、2026年現在の実務では、単にタグが存在すれば良いという段階から、消費者が一目でその内容を理解できるかという視認性の段階へとハードルが上がっています。
例えば、数十個連なるハッシュタグの最後に小さくPRと添えるだけでは、多くの消費者はそれを見落としてしまいます。これは、不当表示とみなされる典型的なケースです。理想的には、スマートフォンの画面をスクロールすることなく、投稿の冒頭や画像内の目立つ位置に、誰からの提供であるかを明記することが求められます。
消費者が情報を読み進める前に、これが広告であることを認識した上で判断できる状態を整えることが、誠実な広報活動の第一歩です。
外部パートナーへのディレクション
インフルエンサーや広告代理店といった外部パートナーへ施策を依頼する際、投稿内容は本人にお任せしますという丸投げの姿勢は、企業にとって最も危険な選択肢となります。なぜなら、事業者が投稿内容に関与していないというポーズを取ったとしても、対価が発生している以上、その投稿の結果に対する法的責任はすべて広告主である企業が負うことになるからです。
実務においては、投稿内容を完全にコントロールするのではなく、広告表記に関する厳格なルールを定めたガイドラインを共有し、契約書に明文化しておく必要があります。パートナーが不適切な投稿を行った際に、企業としてどのように是正させるか、また万が一の事態にどのように責任を分担するかを事前に協議しておくことは、炎上時のダメージコントロールにおいても極めて重要です。
パートナーの自由な表現を尊重しつつ、法的な枠組みだけは揺るがないよう、密なコミュニケーションを維持することが求められます。
ギフティング(商品提供)時の注意点
金銭のやり取りが発生しないギフティングにおいても、ステマのリスクは常に存在します。企業側が「感想は自由です」と伝えて商品を配布したとしても、その商品自体に経済的な価値がある以上、受け取った側にはポジティブな投稿をしなければならないという心理的なインセンティブが働きます。
特に、高額な商品や新製品を継続的に提供している場合、それは実質的な対価とみなされます。消費者庁の基準でも、金銭の授受がなくても、商品の提供を受けている事実を隠して称賛することは、消費者を欺く行為に該当し得るとされています。
したがって、ギフティングによる投稿であっても、必ず「商品を提供いただいた」という事実を明記させる運用を徹底すべきです。こうした透明性の確保が、インフルエンサー自身のフォロワーからの信頼を守ることにも繋がります。
社内検収体制
本記事のメインテーマでもある二次利用のリスクを最小化するためには、社内の検収体制を仕組み化することが不可欠です。SNS上で適切に行われた投稿であっても、それを自社サイトのランディングページやお客様の声セクションに転載する過程で、誤ってPRラベルを削除してしまうヒューマンエラーが散見されます。
サイト更新のフローの中に、元の投稿における広告表記が正しく維持されているかを確認するチェック工程を必ず設けてください。特に、制作を外部の制作会社に委託している場合、デザイン性を優先してハッシュタグをトリミングしてしまうケースが少なくありません。
公開前の最終チェックは、デザインの美しさだけでなく、コンプライアンスの観点から法務や広報の専門担当者がダブルチェックを行う体制を整えるべきです。一度公開された不適切な表示は、即座にデジタル魚拓として記録され、炎上の火種になるという危機感を組織全体で共有することが重要です。
企業のレピュテーションリスクを守るために
2026年のマーケティング環境において、ステマ規制への対応は、単なる法務上の手続きではなく、企業の社会的信用を維持するための経営課題そのものとなっています。
一度失った信頼を回復するには、失墜した瞬間の何倍もの時間とコストを要します。ここでは、組織としてブランドを守るための二つの柱について詳しく解説します。
社内ガイドラインの策定と教育
ステマ炎上を未然に防ぐための第一歩は、社内における明確な基準の策定とその徹底です。現場の担当者や外部パートナーが、良かれと思って行ったプロモーションが、実は法律に抵触していたという事態を避けるためには、具体的で実務的なガイドラインが不可欠です。
ガイドラインには、どのような場合に「PR」や「広告」の明記が必要なのか、どのような表現が消費者に誤解を与えるのかを、直近の行政指導事例(指導命令)などを交えて記載する必要があります。特に2026年現在は、SNSの投稿を自社サイトへ二次利用する際のルールを明確に定義しておくことが重要です。
また、ガイドラインは策定して終わりではなく、組織全体に浸透させるための定期的な教育が欠かせません。広報・マーケティング部門だけでなく、商品開発や営業部門、さらには外部のインフルエンサーや代理店に対しても、景品表示法や最新の運用基準に関する研修を実施し、リスク感度を常に最新の状態に保つことが求められます。
これにより、組織全体でステマのリスクを未然に察知し、是正できる体制を構築することが可能になります。
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ステマ炎上は、企業の目が届きにくい夜間や休日に爆発的に拡大する傾向がありますが、弊社の専門スタッフによる有人監視とシステムを組み合わせたハイブリッド体制が、初動の遅れを致命的なものにさせません。
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掲示板やSNSなど、広範なメディアからリスクを抽出する弊社の監視網を活用することで、最悪の事態を防ぐための守りの体制を整えることができます。
よくある質問(FAQ)

ステルスマーケティング(ステマ)について、よく寄せられる質問にお答えします。
Q: 過去(2023年以前)の投稿も遡って修正が必要ですか?
A: 2023年10月以降もネット上で閲覧可能な状態であれば、規制の対象となり得ます。リスクの高いものから順次、修正または削除を検討すべきです。
Q: 従業員の個人のSNSでの発信も「ステマ」になりますか?
A: 業務の一環として(あるいは会社の指示で)行っている場合は「事業者の表示」とみなされます。社内ガイドラインの徹底が必要です。
まとめ|誠実なマーケティングこそがブランドを守る
ステルスマーケティング(ステマ)は、短期的には売上や認知度を向上させる魔法の杖に見えるかもしれません。しかし、2026年の透明な情報社会において、その代償はあまりにも大きく、リスクは魔法の効果をはるかに上回ります。
2023年の規制開始から現在に至るまで、多くの企業がステマで炎上し信頼を失い、一方で、広告であることを正々堂々と明かしながら、消費者と誠実な対話を続けた企業が支持を集めてきました。
SNS投稿の二次利用という、一見すると些細なプロセスにこそ、企業の姿勢が表れます。転載する一枚の画像、引用する一言の口コミ。そこに「消費者を欺こうとする意図」がないか、常に自問自答し続けることが、長期的なブランド価値の防衛に繋がります。
法令を遵守することは最低限の義務ですが、それを超えて「消費者の信頼を裏切らない」という高い倫理観を持つこと。それこそが、2026年以降のマーケティングを勝ち抜くための、最も強力な戦略であると断言できます。
本記事が、貴社の広報活動や販促活動におけるコンプライアンス強化の一助となれば幸いです。もし、現在の自社サイトの表記や、過去のインフルエンサー施策、あるいはSNS上の評判管理に少しでも不安がある場合は、ぜひ株式会社エルプランニングにご相談ください。専門の監視サービスやコンサルティングを通じて、貴社のブランド価値を共に守り、健全なマーケティング活動をサポートいたします。
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