インターネット上の炎上対策に効果のあるサービスには、どのようなものがあるでしょうか。スマートフォンやSNSの爆発的な普及によって、ネット炎上という言葉が一般的に認知されるようになりました。
近年では、学生のアルバイトがSNS上に問題のある動画をアップして炎上、それによって会社の営利活動に深刻な影響を及ぼす事件なども発生しており、誰もが「炎上なんて、自分には関係ない出来事」とは言い切れない状況に立たされています。
しかし、企業によってはSNSの炎上に対してまだ対策を行っていなかったり、炎上対策が必要とは感じていながらも「何からすれば良いのかわからない」と考えていたりする企業も多いでしょう。
そういった企業向けに本記事では、炎上の予防となる対策やおすすめのサービスなどを紹介します。
インターネット上で炎上が起こってしまう原因
インターネット上では、度々ネガティブな発言や問題のある発言が話題になる「炎上」が起こります。この炎上はどういった理由で起こるのでしょうか?炎上の原因として、大きく分けると以下のようなものが考えられます。
- 異物混入や情報漏えいなど企業の不祥事
- 「バイトテロ」など従業員の悪ふざけ
- 社員や退職者からの内部告発
- 不適切な発言やプロモーション
異物混入や情報漏えいなど企業の不祥事
まず炎上の理由として、「異物混入や情報漏えいなどといった企業の不祥事」が原因という場合が挙げられます。
企業が自ら起こした不祥事は炎上の理由として最も身近ですが、ごくたまに悪ふざけのつもりで自ら異物を混入した上で写真を撮り「異物が混入していた」と虚偽の情報をSNSなどに投稿する一般人もいるため、事実関係の確認など速やかな対応が求められます。
「バイトテロ」など従業員の悪ふざけ
次に「従業員の悪ふざけ行為」です。「バイトテロ」「バカッター」などの用語を聞いたことのある方もいるかもしれません。
従業員が職務中や職場での休憩中に不適切な動画や写真を撮影してTwitterやInstagram、YouTubeなど不特定多数が閲覧可能な場所にアップする事によって、会社自体の信頼を落としてしまう事に繋がった例が複数確認されています。
社員や退職者からの内部告発
さらに「社員や退職者からの内部告発」も炎上してしまう事が多く、例えば会社の体制に不満を持って辞めた社員がTwitterなど匿名で意見を言える場で「産休・育休を理由に不当な扱いを受けた」「労働環境や設備がずさんだった」など主観的な内部の事情を投稿する人も少なくありません。
不適切な発言やプロモーション
そして近年、世界的に増えているのが企業の「不適切な発言やプロモーション」によって炎上してしまう例です。
企業として何かを否定したり貶めたりする意図は全くなくても、表現の方法や使用する言葉によって受け取り側に「自分たち(または、自分の大切にしているもの)が貶められている」と考えられてしまうため多くの批判を集め、炎上してしまいます。とくに、宗教・人種に関わる発言や性別・ジェンダーに関わる発言を行う時は十分に注意しましょう。
企業として不祥事に早く気付き謝罪などの適切な対応を速やかに行えれば鎮火も早くできますが、間違った対処を行ったり対応自体が遅れたりしてしまうと取り返しがつかないほど被害は大きくなってしまいます。
炎上対策のために企業が行うべきこと
ネット上の発言によって、企業が炎上の危機に立たされるリスクは、インターネット上に普段から存在しています。炎上対策の具体的な方法には4つのポイントがあり、これらをおさえることで、炎上のリスクを回避できます。
- 予防
- 監視
- 原因分析と改善
- 情報収取
炎上が発生しないようにする「予防」、炎上の火種が発生しないかをチェックする「監視」、炎上が発生してしまった時の「原因分析と改善」、解決や改善に向けた「情報収集」、これらのポイントにおいて脆弱な点があると、炎上に発展する火種が発生しやすく、企業側にとって不都合な情報が拡散しやすくなります。
炎上対策は普段からの取り組みが必要
炎上対策は、事後の対応も重要と言えますが「炎上が起こらないようにする」ための日々の取り組みが必要です。
企業としての炎上に対する知見が薄く対策が不十分な状態で、無自覚にインターネット上で情報発信し続けてしまうことで、 思わぬ炎上を招く恐れがあります。さらに、炎上が起こってしまった際には適切な対応が出来ず、被害を拡大させてしまう恐れがあります。
そうならないために、普段から炎上が起こらないよう対策を行いましょう。「備えあれば憂いなし」という言葉もあるように、早い段階で対策を導入することで将来的なリスクを回避することが出来ます。具体的な事前の炎上対策としては、以下の3つの対策をおすすめします。
- ソーシャルメディアガイドラインの作成
- アカウントの運用ルールの作成
- 緊急時の体制づくり
ソーシャルメディアガイドラインの作成
社員個々人の情報発信についてコントロールすることは難しいと言えますがSNSアカウントでの情報発信をルール化した「ソーシャルメディアガイドライン」を作成し、投稿するコンテンツの作成内容や、更新頻度、発信してはいけない内容などを明確に取り決め周知しましょう。
また、企業がSNSの公式アカウントで情報を発信する際の、利用者(フォロワー)向けのガイドラインを作成し、公式ホームページなどで公開しておくことで、社内外の認識を統一でき、有事の際にも利用者からの理解を得やすくなる事があります。
SNSに関係する問い合わせ先を一本化しておく事で、万が一トラブルがあった際の社内の混乱を抑えられる効果も見込めます。
以下のような企業や法人のソーシャルメディアガイドラインが参考になるでしょう。
- 味の素冷凍食品株式会社
ソーシャルメディアガイドライン|味の素冷凍食品 - 日本赤十字社
ソーシャルメディア・ガイドライン|日本赤十字社 - シヤチハタ株式会社
ソーシャルメディアガイドライン|シヤチハタ
SNSに力を入れている企業であれば、偽アカウント(公式のように振る舞う非公式アカウント)が出現したり、企業に関する誤情報が蔓延したりなど、ユーザー(フォロワー)の混乱を招くトラブルが発生する事もあります。
そういった不測のトラブルがあった場合でも、上記の企業のようにソーシャルメディアガイドラインのページに企業が公式に運用しているSNSのアカウントをまとめておけば、解決の一歩としてまず公式ホームページの内容を案内できます。
最小限の動きで事態を納めることができるといったメリットも見込めます。
アカウントの運用ルールの作成
公式アカウントでの情報発信をする場合は、情報発信や投稿のチェックを誰が行うか、ログイン情報はどのように管理するか等のアカウントの運用ルールを作成しておくことが望ましいと言えます。
ルールを決める際は、アカウントを運用する上で「やって良い事」「やってはいけない事」を明確化します。企業のアカウントとして、紹介するサービスや運用目的に合わせた「中の人」のキャラクターを確立しておくこともポイントです。
また、TwitterやInstagramなどユーザーが気軽にコメントを送れるようなSNSではイレギュラーへの対応方法(コメントへの返信は行うか、クレームが来たらどうするかなど)も考えておく必要があります。こういった対応方法はSNSの担当者だけではなく、マーケティングやカスタマーサポートの担当者も交えて決定し、あらかじめスムーズに連携を取れるようにしておくと良いでしょう。
特に、複数の担当者で運用を行う際はとくにしっかりとルールを作成しておくことをオススメします。
緊急時の体制づくり
会社が取り扱う商品やサービスに不備が発覚したり、ネット上に炎上の火種となるような情報を発見した時に、誰が対応にあたるか、連絡手段はどうするか、など緊急時の体制も明確にしておけば、炎上の影響拡大を防ぐことが可能です。
社員の誰でも速やかな初期対応ができるよう、「炎上対策マニュアル」のような形でマニュアル化し、該当部署だけではなく全社員に共有しておく事が望ましいと言えます。また、実際の炎上を想定した「ネット炎上のための社員研修」を行い、実際に社員全員にマニュアルの内容が定着しているかを確かめましょう。
さらに、定期的にマニュアルに不備がないか、時代の流れに沿ったものになっているかなどをチェックし、都度調整を行っていく事も大切です。
自社内で炎上対策すべきか、外部サービスを使うべきか
炎上を発生させないための「予防」 は自社内でも行うことが可能です。上であげたガイドラインやアカウントの運用ルール作成・体制整備以外にも、社内研修を実施するなど、組織内部に関することは自分達で実施できます。
これらに加えて、外部の研修を利用したり、炎上対策の知見を持っている専門家の意見を取り入れることで、より効果的な対策を行うことが出来ます。
「監視」については、WEB上やSNS上で発信されているユーザーの投稿を24時間監視する必要があり、社員が行うのは人的コストを圧迫します。監視ツールなどの外部サービスを利用することで、効率的に炎上の火種となるような投稿の早期発見を行うことが出来ます。
「原因分析と改善」については自社内でも可能ですが、既に炎上が発生してしまっていたり、精度の高い分析や対策が必要な場合には、風評対策を行っている企業に相談したりすることで、現実的な解決方法を見出し、改善方法も把握しやすくなります。
「情報収集」についても自社で行うことが出来ます。しかし、インターネットの流行は日々変わり、炎上対策もトレンドに基づいた方法が必要です。セミナーを利用することで、最近の炎上事例や、具体的な対策方法などを学習できます。
炎上対策に利用できる外部サービス
企業に対するマイナス評価・評判が広まることによって及ぶ経営リスクを「レピュテーションリスク」と呼びます。多くのインターネットサービスが生まれることで、企業を評価する価値観が変化し、インターネット利用におけるレピュテーションリスクの対策の必要性が注目されています。
外部のサービスを利用することで、レピュテーションリスク回避を強固なものにすることが出来ます。炎上の火種を最小限におさえるために有効なサービスを紹介します。
SNS・ブログ・掲示板等の監視
炎上の発生を抑えるためには、「自社に関する情報がインターネット上でどのように扱われているか」「自社に関して、インターネット上ではどういった内容の評判や口コミが投稿されているのか」をしっかりと把握しておく必要があります。
TwitterやFacebookなどのSNSやブログ、5ちゃんねるや爆サイなどといったインターネット掲示板を監視し、問題のある投稿がないか監視することで、炎上のリスクとなるような火種があった場合でも早期に鎮火することができます。
しかし、SNSをはじめとするインターネット上の必要な情報を常に全て監視するためには、大きな時間や人員コストが必要です。社内のリソースを確保できないという場合には、有人監視サービスや監視ツールを導入することを検討してみても良いでしょう。
有人監視サービス
有人監視サービスは、外部の企業(主に誹謗中傷対策と行っている業者)に有人で行う監視を委託し監視を行うサービスの事を言います。
委託先によって24時間体制で監視を行うサービスであったり営業日のみの定時監視を行うサービスであったりと内容は様々ですが、総じて「人の目を使って監視を行うため、炎上の恐れのある投稿を見つけ出す精細度が高い」といった点が大きなメリットと言えます。
監視ツール
外部の企業(主に誹謗中傷対策と行っている業者)が提供している監視ツールを導入するし、自社の人員が監視を行う方法もあります。
ツールを取り入れる事で炎上に繋がる投稿を探す時間の短縮に繋がるだけではなく、有人監視サービスに比べて低コストで導入可能である所もメリットです。
もしもツールを見ていない時間帯に炎上しそうな投稿が検知された場合には任意のアドレスにアラートメールが入る機能がついたツールなどもあります。
有人監視サービスや監視ツールについては、こちらの記事でも詳しく説明しています。
炎上対策セミナーに参加する
誹謗中傷対策を行っている会社が開催している炎上対策のセミナーを活用しましょう。
炎上対策についての知識や、炎上を起こさないための体質改善、社内教育、運用ルール作成をどのように実施するか、実際の事例を元に予防・回避方法を知ることが出来ます。
講演会という形式をとって座学で学ぶものや、ワークショップやイーラーニングを使用して学習するものなど、様々な内容で開催されていますので、自社の状況に合ったセミナーを受講してみましょう。
炎上対策マニュアル策定支援サービス
セミナーと合わせて、社内規定の作成支援や炎上対策マニュアル策定支援などを実施している会社もあります。長期的な対策のための体質づくりを行いたい場合には、これらも検討しましょう。
社内規定や炎上対策マニュアルは、もちろん自社内のみで作成することも可能です。しかし、インターネットにおける炎上対策実績の多い会社であれば、多くの事例を元にポイントをおさえた効果的なマニュアルを作成してもらえます。
炎上リスクを回避して安全な情報発信を行うために、社内で気付く事だけではなく社外で炎上対策の実績のある会社のノウハウをマニュアルに反映させると安心です。
炎上した時に利用できるサービスと企業側の対策
さて、ここまでは「炎上を防ぐための対策」について説明してきましたが、ここからは「すでに炎上が始まっている」「炎上の影響で被害を受け始めている」という状況を想定し、情報拡散による二次被害を防いだり、炎上による影響の波及を食い止めたりする方法について説明します。
また、今は沈静化していても過去に炎上した経験がありり、いまだにインターネット上にネガティブな情報が蔓延している状況(いつ再炎上するかわからない状況)が心配だという場合におすすめのサービスなども併せて紹介します。
逆SEO対策でネガティブ情報を押し下げる
SNSや掲示板サイトにネガティブな情報を書き込まれてしまっても、その情報がサイトの定めたプライバシーポリシーや法律に違反しているものであれば、サイトの運営者に情報の削除申請を行うことで削除してもらうことが可能です。
しかし、すでに情報が「炎上」状態になり、SNSや複数のサイトで拡散が始まってしまった場合には、複数の削除申請を行う時間や作業コストが必要となってしまいます。その上、運営者側の対応を待っている間にもどんどん情報は拡散され続け、二次被害を防ぎきることが出来なくなる場合があります。
誹謗中傷対策会社が提供する逆SEO対策サービスを利用し、誹謗中傷を含んだページがGoogleなどの検索エンジンに上位表示されないように施策を行うことで、これらが多くの人の目に触れにくくなるうに対策することが可能です。
風評を含んだページを直接的に削除するのではなく、ユーザーがこれらの情報を認知しなくなるように対策することで、不都合な情報がネット上で広まることを防ぐことができます。
炎上によるサジェスト汚染の改善
炎上が発生して、会社に対しての批判的な内容がインターネット上に発信されてしまうと、ネットユーザーがGoogleなどの検索エンジンを利用し、会社名で検索をかける回数が増えます。
ユーザーが会社に対するネガティブな情報を多く調べると、そのネガティブな情報が「ユーザーからのニーズが高い」と検索エンジンに判断され、より多くのユーザーがネガティブな情報にアクセスしやすくなる、という状況が生まれます。
これらが繰り返されることで「サジェスト汚染」と呼ばれる、検索サジェスト上に社名に関するネガティブな関連キーワードが表示されるという状況が発生します。
サジェスト汚染が起こると、ユーザーが社名とネガティブなワードを関連付けて検索しやすくなり、検索結果にも後ろ向きな情報が表示されやすくなります。その結果、会社に対してポジティブな印象を持ちづらくなります。
Googleは「オートコンプリートポリシー」と呼ばれる、サジェストに表示されるキーワードについてのルールを設けています。暴力的な表現を含んでいたり、差別表現などを含んでいたりするポリシー違反のワードであれば、弁護士に依頼して法的な削除申請を行ってもらうことも可能です。
そうではないワードの場合は削除ができない場合もありますので、誹謗中傷対策業者へ相談し適切なアドバイスや提案を受け、削除以外の方法での解決を試みましょう。
参考:Google のオートコンプリート候補の仕組み – Google 検索 ヘルプ
SNSアカウント炎上時の対策
会社のSNSアカウントで炎上が起こった場合には、社外と社内、両方の対策が必要です。
社外に対しては、謝罪対応の見極めが必要です。状況によって、公的に謝罪文をリリースする必要があるのかどうかを判断しましょう。社内の対応としては、作成したソーシャルメディアガイドラインや緊急時の対応方法に則して、フローに沿って冷静に対応していきましょう。
ガイドラインを明確かつ具体的に決めておき、あらかじめ社員に共有しておくことで、万が一炎上が発生しても社員がそれぞれ慌てず対応できるようになります。
共通のルールをあらかじめ作っておくことで不用意な対応をするというリスクもなくなり、結果として早期の鎮火に繋がるのです。
もし、法律に違反しているような悪質な書き込みが投稿されて会社の名誉が著しく低下してしまった場合には、法的な措置も視野に入れて弁護士にも相談しましょう。
まとめ|炎上対策は社内の改善と外部サービスの利用が効果的
企業にとってインターネット上での情報発信は不可欠であり、レピュテーションリスク回避の対策は避けては通れない課題となっています。
炎上を未然に防ぐための予防や監視、火種が発生した時の原因分析と改善、情報収集を綿密に行い守りを固めることで、ネットの拡散力を最大限に活かしながら自社の情報をアピールすることが出来ます。
自社内の体制をより良くして効率的に炎上対策を行うためにも、外部のサービスを上手く取り入れながら改善していきましょう。
清水 陽平