Google・Yahoo!などの検索窓でキーワードを入力すると、関連する候補のワードが表示されます。入力したキーワードに関連したワードが自動的に表示されるこの機能は、「サジェスト」と呼ばれ、ユーザーが知りたいであろう情報に辿り着くのを助けてくれます。
ユーザーがたくさん検索するキーワードなどを表示してくれるため、流行のワードを把握することも可能です。
私たちインターネットユーザーを補助してくれるサジェストですが、この便利な機能の弊害として検索窓にネガティブな内容が表示されてしまう「サジェスト汚染」という問題が発生してしまうこともあります。
本記事ではサジェストが表示される仕組みや、Google・Yahoo!において「サジェスト汚染」の被害にあってしまった場合の情報削除の方法などを紹介します。
サジェストとは?
サジェストとは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンの検索窓に自分が調べたいキーワードを入力すると、検索したい語句を予測して表示してくれる機能のことです。
サジェストは英語で「suggest」=「提案する、連想させる」という意味。その通り、ユーザーが入力したキーワードに関連するワードを検索エンジン側が提案してくれるのです。
例えば「遊園地」というキーワードで検索をかけると、下のように遊園地に関連する地域名や、イベントなどについてのキーワードが表示されます。
引用:Google
自分が調べたいキーワードに関連した候補ワードが自動的に表示されるため、未知の内容に
ついての検索が容易になったり、他のユーザーがどのようなワードで検索しているかを把握することができます。
Googleサジェストは厳密に言うと、Google公式では「オートコンプリート」と呼ばれています。
Googleサジェストが表示される仕組み
Googleの検索エンジンは、検索ユーザーがこれまでに検索したキーワードをデータとして蓄積しています。「検索クエリ」と呼ばれるデータを元に、検索窓にどのような関連キーワードが表示されるかを決定します。
- クエリの言語
- クエリが実行される場所
- クエリで注目を集めている関心事
- ユーザーの過去の検索
検索クエリは、検索結果上でどのようなサイトが上位表示されるかを左右するデータでもあり、検索エンジンのアルゴリズムにとって重要な情報です。
「クエリが実行される場所」が考慮されるため、Googleのサジェストは検索する場所によっても変化することがあります。
また「ユーザーが多く検索したか」という累積だけでなく、キーワードと関連性の強いページがどれほど存在しているかという点もポイントとなります。
そのためネガティブなキーワードが表示されている場合には、その対策として、ポジティブな情報をネット上に発信していくことで改善されていく可能性があります。
参考:Google のオートコンプリート候補の仕組み – Google 検索 ヘルプ
Yahoo!サジェストが表示される仕組み
Yahoo!サジェスト機能は、公式には「キーワード入力補助機能」と呼ばれています。
Yahoo!サジェストの場合には、検索クエリを最も評価していて、Googleほどキーワードと、公開されているWEBサイトとの関連性を重要視していません。
Yahoo!とGoogleのサジェストは、このような予測変換の仕組みに違いがあるため、同じキーワードを入力していても、関連ワードとして表示されるキーワードは異なります。
SNSや掲示板サイトに話題となるような内容が投稿されると、予測変換に反映されやすい点もYahoo!サジェストの特徴です。
参考:Yahoo!検索ヘルプ
その他の検索サジェスト
サジェストは検索エンジンだけに実装されている機能ではなく、SNSやアプリなどにも使用されています。ユーザーが知りたい情報に辿り着きやすくするための機能であるため、たくさんのユーザーの情報がアップロードされているコンテンツが扱われているサービスであれば、必要な機能です。
Bingサジェスト
引用:Bing
Windowsを使用しているインターネットユーザーであれば、一度はBingを使ってみたことがあるでしょう。Windows10に標準でインストールされているMicrosoft Edgeを使用するとまずBingにアクセスされ、そのまま検索することが可能です。
2009年に発表された「Bing」は2020年に「Microsoft Bing」に改名され、現在の日本ではGoogla・Yahoo!に次ぐシェア率と言われています。「PC」に限定した場合のシェア率は2位となっており、これは日本ではまだMicrosoft社のOSを使ったパソコンの利用がメジャーであるためではないかと推察されます。
GoogleやYahoo!と比較すると、ユーザー層や検索ニーズも異なるため、サジェストに表示されるキーワードの内容もやや異なります。
Twitterサジェスト
引用:Twitter
Twitterは、X Corp.(前身:Twitter, Inc.)が提供するSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)です。近年ではサービスの改変が度々話題に上がるものの、国内のアクティブユーザー数は約4,500万人ほどもいると言われているコミュニケーションツールです。
Twitterはリアルタイムに更新され、利用しているユーザーのニーズやトレンドが反映されやすいという特徴があります。そのため検索サジェストにも、入力したキーワードに関する流行のワードや季節に関するワードが表示されやすい傾向にあります。
Twitterに限らず、サジェストは検索するユーザーのニーズが反映されるため、どのようなサジェストワードが表示されるか調べると、多くのユーザーが関心を持っているトピックの傾向を把握することができます。
YouTubeサジェスト
引用:YouTube
2022年で日本版をリリースしてから15周年を迎え、さらに利用者を伸ばしているYouTube。国内での月間利用者数は既に7,000万人を越えたと言われています。
ユーザーが急上昇しているYouTubeにもサジェスト機能は実装されていて、多くのユーザーが検索して「見たい」と感じている動画についての関連キーワードが表示されています。
こちらは検索エンジンと連動しているわけではないので、YouTube内にアップされた動画を検索するためのロジックに基づいたサジェストが表示されます。
参考:YouTube が人気な理由とは – Think with Google
サジェストが汚染されてしまったら?削除の必要性
サジェストは、ユーザーが関心を持っている情報へのアクセスを容易にしていて、多くのインターネットユーザーにとって必要な機能です。
検索の効率を飛躍的に向上する、という点では非常に有用な要素ではありますが「サジェスト汚染」と呼ばれる、企業や個人のネームバリューに関わる、新たな問題が発生しています。
企業名でサジェスト汚染が発生した場合は?
企業名でサジェスト汚染が発生した場合には、会社についてのネガティブなキーワードが検索窓に表示されてしまいます。
掲示板サイトやSNSなどで、会社に対して後ろ向きな評判や噂が投稿されてしまったり、会社の体質についての批判的な内容が書き込まれてしまったりすることで、検索ユーザーがこれらの情報にアクセスしやすい状況が生まれます。
対外的な評判(噂など) | 倒産 トラブル リストラ 営業電話 悪徳 詐欺 迷惑 被害 事件 事故 最悪 |
企業の体質について | ブラック 残業 ステマ |
店舗などの評判 | まずい ぼったくり ひどい |
事実無根で単なる噂のキーワードであっても、ネット上にこれらに関する情報が存在して、ユーザーが関心を持っていたら、サジェストに反映されてしまいます。
もし入社を検討している転職希望者や取引先の方が検索した時に、このようなサジェスト汚染を見かけてしまったらどうでしょうか?
まず、会社に対して不信感を抱いてしまいます。さらに、サジェストの風評ワードをクリックするとネガティブな情報にたどり着きやすくなり、それを読んで更に会社に対して悪い印象を抱きやすくなります。
特に企業名でサジェスト汚染が発生した場合には、取引先や顧客に見られて売り上げ低下を招いてしまったり、採用活動への影響を招く恐れがあります。深刻な打撃を回避するという意味でも、早めの対策が必要です。
個人名でもサジェスト汚染は起きる?
個人名の場合には、本人に関するネガティブな噂や過去の汚点、プライベートを揶揄するキーワードが表示されるケースが多いです。
噂や本人の過去について | 逮捕 犯罪 事件 前科 脱税 破産 詐欺 |
プライベートに関する内容 | 整形 トラブル アンチ マルチ |
企業名の場合と同じく、これらのネガティブワードが検索されると検索エンジンはその検索クエリを蓄積し、「人気の検索ワード」だと判断するおそれがあります。そうすると、例えそれが根も葉もない噂だったとしてもネガティブなワードがサジェストに表示されてしまうケースがあるのです。
個人名の場合では本人の人柄に関する内容を含む事例も多く、サジェスト汚染にあってしまった当人は、大きな心理的打撃を受けます。
場合によっては、結婚や就転職など、人生の転機に大きな影響を及ぼし、汚染の被害が深刻化すると、デジタルタトゥー化してしまいます。
では、サジェストにネガティブな検索ワードが表示されてしまったら、どうすれば良いのでしょうか?ネームバリューの低下をもたらす前に、削除などの対応を行い、ブランドを保護することが大切です。次項では、不都合なワードの削除方法を紹介していきます。
Googleサジェストの削除方法
Googleは、オートコンプリートポリシーと呼ばれる、ユーザーが有用な情報を得て、快適に検索エンジンを利用できるように求めたガイドラインを定めています。
暴力を助長したり、差別的な表現を含む検索候補、また露骨な性表現を含む検索候補はオートコンプリートポリシーに違反しているため、Googleが削除対応をしてくれます。
Googleサジェストのポリシー
Googleは適切なサジェスト候補を表示させるため、ポリシーを定めています。下記に当てはまる内容のワードはシステムで表示を防いでいます。
- 危険なコンテンツ
- ハラスメント コンテンツ
- ヘイト コンテンツ
- 露骨な性表現を含むコンテンツ
- テロに関するコンテンツ
- 暴力や流血
- 下品な言葉や冒とく的表現
また、選挙関連のワード・健康に関するワード・個人に対する中傷ワードといった内容も表示させない決まりになっています。
Googleサジェスト削除の申請
上記のポリシーに違反している内容であれば、削除してもらえる可能性があります。まずは自分が削除したいワードがポリシー違反に当たるのか確認しましょう。ただし、事実に即したワードは削除してもらえない可能性が高いです。
Googleサジェスト削除の申請方法①
Googleへのサジェスト削除申請は、サジェストが表示された右下の「不適切な検索候補の報告」から行うことができます。
引用:Google
これをクリックして、削除したい検索候補を選択した上で、不適切な理由として
- 関連性が低い
- 暴力や残虐行為
- 露骨な性的表現、下品な表現、冒とく的な内容
- 差別的
- デリケートまたは中傷的
- 危険または有害なコンテンツ
- 上記以外の理由で不適切である
のどれかを選択して送信します。
引用:Google
Googleに申請をする方法としてはこれがもっとも簡単です。しかし、回答などがあるわけではないため、よりきちんとした対応を求めたいのであれば「法律に基づく削除に関する他の問題を報告する」というフォームから削除申請を行います。
Googleサジェスト削除の申請方法②
こちらのフォームから申請を行います。
引用:法的な理由でコンテンツを報告する – Legal ヘルプ
上の画像のページで「リクエストを作成」というボタンをクリックすると、以下のページに遷移します。今回はGoogleサジェストについて報告を行うため、以下の画像の手順に沿ってラジオボタンの中からそれぞれ該当のものを選択します。
少し紛らわしい部分がありますので、画像を見ながら落ち着いて選択していきましょう。
1.「報告対象のコンテンツが表示されている Google サービスを選択してください」という項目では「Google 検索」を選択
引用:Google 上のコンテンツを報告 – Legal ヘルプ
2.「どのプロダクトに関連するリクエストですか?」という項目では「その他の検索機能」を選択
引用:Google 上のコンテンツを報告 – Legal ヘルプ
3.「コンテンツを報告する理由を選択してください」という項目では「オートコンプリートまたは関連検索キーワード」を選択
引用:Google 上のコンテンツを報告 – Legal ヘルプ
4.2回目の「コンテンツを報告する理由を選択してください」という項目では、「コンテンツを報告する法律上の理由」を選択
引用:Google 上のコンテンツを報告 – Legal ヘルプ
5.3回目の「コンテンツを報告する理由を選択してください」という項目では、「その他」を選択(既に裁判所から違法性が認められている場合は「裁判所命令」の方を選択)
引用:Google 上のコンテンツを報告 – Legal ヘルプ
6.表示された「リクエストを作成」ボタンをクリックすると、「法律に基づく削除に関する問題を報告する」というフォームが表示されます
引用:法律に基づく削除に関する問題を報告する – Legal ヘルプ
まずは、「申立人の情報」を記入していきます。個人の場合は「居住国」「戸籍上の姓名」「連絡先メールアドレス」、法人の場合は加えて「会社名」を記入します。
その下にある「権利侵害にあたるとお考えのコンテンツ」の欄で重要なポイントを細かく解説していきます。
1.コンテンツを見つけるのに使用した検索キーワード
キーワードが会社名の場合は会社名、個人名の場合は個人名を記入します。スペースの有無などに気を付けて正しいワードを入力するようにしましょう。
(例)〇〇(人名)
2.検索キーワードの入力中に表示された、不適切とお考えの予測キーワード
サジェストに表示されているワードで、削除したいものをこちらに記入します。
(例)〇〇 詐欺
3.権利侵害にあたるとお考えのコンテンツが表示される国
こちらは、表示されているのを確認している国が日本の場合は「日本」のままでOKです。
4.ご自身の国で適用される法律に従いその検索候補が違法となる理由をできる限り詳しくご説明ください
例えば、「〇〇 詐欺」を削除したい場合、〇〇(人名)は詐欺と全く無関係であり事実無根のワードである事と、そのワードがどういった法律に違反しているか、またその根拠を記述します(名誉毀損であるなど)。具体的な法律、条文の適用がある旨の指摘ができると対応してもらいやすくなります。
5.スクリーンショットの添付・署名
最後に、サジェストのスクリーンショットを添付し、虚偽の申告でないことへの同意にチェックを入れ、電子署名を行います。情報を送信すると、記入したメールアドレス宛に申告受理のメールがくるので、メールボックスを確認しましょう。
Googleの場合は削除可能か不可能かの結果がメールで返信されます。結果の通知がされるまでの日数は一概ではないですが数日程度で来ることも増えている印象です。
Yahoo!サジェスト削除の申請方法
Yahoo!もサジェストの表示について、ヘルプで簡単に触れています。
当該アルゴリズムによって表示された関連検索ワードであっても、そのワードの表示がスパム、猥褻用語、差別用語、犯罪を助長する用語、その他当社が不適切であると判断した場合には非表示にすることがあります。
参考:Yahoo!検索ヘルプ
Yahoo!サジェスト削除の申請方法
Yahoo!の公式は「Yahoo!検索 – お問い合わせフォーム」を設置していますので、こちらのフォームから申請を行います。
お問い合わせを送るには、ログインしてYahoo!のIDの連携に同意する必要があります。Yahoo!のアカウントを持っていない場合は、申請前にまずアカウント取得作業を行いましょう。
お問い合わせボタンを押すと「ユーザー識別子」と「メールアドレス」情報の提供への同意可否画面に移行しますので、「同意してはじめる」で次に進みます。次の画面で「どの検索についてのお問い合わせですか」と聞かれるので、そこでは「関連検索ワードの情報削除」を選択しましょう。
このフォームから申請する時に必ず記入しなければいけない場所が3点あるので、詳しく見ていきましょう。
1.検索結果ページのURL
ワードを検索した結果ページに出るURLをアドレスバーからコピー&ペーストで入力します。
2.関連検索ワード
サジェストに表示されているワードで、削除したいものをこちらに記入します。
(例)〇〇 倒産
3.詳細
こちらの欄に削除したい理由を記入します。
(例)サジェスト欄に「倒産」という事実無根のワードが表示されており、契約や採用に影響が出ているため。
全て記入し、間違いや記入漏れがないか確認したら「送信」ボタンを押します。
申請が通った場合は、フォームより情報を送信してから最短で1日〜大体1週間程度で削除が完了します。Yahoo!の場合は、削除が受理されたか否かの返答はありませんので、1週間〜10日程度を判断の目安にしておくと良いでしょう。
自分で削除ができないときはどうすればいい?
上記の方法で申請をしても、GoogleやYahoo!側が認めなければ、風評ワードの削除はできません。そういった場合の手段として、次のような方法があります。
弁護士にサジェスト削除代行を依頼する
汚染されたサジェストを自分で削除するのが困難な場合には、弁護士に削除申請を依頼するという方法があります。法律の専門家である弁護士に依頼することで、自分で申請を行うよりも削除が成功する可能性が高まります。
風評被害に対する法律の知見がある弁護士であれば、表示されてしまったネガティブなサジェストが、具体的にどのような権利侵害にあたるかを明確に判断した上で、削除申請を行うことが可能です。
弁護士は、それぞれ自分の専門領域を持っています。相談する場合には、インターネットのトラブル解決に専門知識のあり、解決実績のある方に相談しましょう。
法的な削除が困難な場合は、誹謗中傷対策業者に相談
インターネットの風評対策業者は、サジェストがネガティブワードで汚染されてしまった際の対応や、ネガティブな情報が検索エンジン上に上位表示されてしまった場合などの対策を提供しています。
風評対策業者に相談することで、サジェスト対策を行うべきかどうか判断してもらい、削除以外にどのような対策を行うべきか、という提案も受けることができます。
報酬をもらってサジェストの削除や記事削除等の示談交渉を代行することは、弁護士にしか権限がありません。削除代行を謳う風評対策業者は要注意です。
風評対策対策業者は示談交渉以外の手法や、気になるキーワードがどのくらい検索されているのかを調査をして、対策をすべきキーワードの調査や技術的なアドバイスを行うことができます。弁護士に相談して削除が難しかった場合や、対策すべきか悩んだ際は、対策業者に相談することも選択肢の1つです。
まとめ | ネガティブなサジェストワードの削除は弁護士か業者に相談しよう
サジェストに表示されるキーワードは、多くのユーザーが調べる検索ニーズが反映されています。ここにネガティブなキーワードが表示されてしまうことで風評被害が深刻化し、企業名や個人名のネームバリュー低下を招いてしまいます。
サジェストの削除は個人では難しい場合もあるため、風評対策業者や弁護士による削除対応も検討しながら、問題解決に当たりましょう。
清水 陽平