SNSトラブル対策

【自治体・公共団体向け】公務員のSNS不適切投稿への対応マニュアル

【自治体・公共団体向け】公務員のSNS不適切投稿への対応マニュアル

職員が個人のSNSに投稿した一件の内容が、自治体全体への信頼を揺るがす。そんな事案が全国で続いています。総務省の調査では、令和6年度に懲戒処分を受けた地方公務員は4,682人。SNSに起因する件数を示す統計区分はありませんが、不適切な投稿が信用失墜行為などとして処分に至る事案は毎年のように報じられています。

エルプランニングのコンテンツチームです。私は以前、ブランドセキュリティ部門で企業や団体の検索結果・SNS監視を担当していました。その経験も踏まえ、本記事では自治体・公共団体の総務・人事・広報担当者の方に向けて、職員のSNS不適切投稿への対応を時系列で整理します。

【この記事の結論】公務員のSNS不適切投稿に対応する5つのポイント
  • 公務員のSNS利用自体は禁止されていませんが、匿名・勤務時間外の投稿でも地方公務員法33〜36条に違反する可能性があります。
  • 投稿の発覚直後は、削除を急がず、「証拠保全→本人への事実確認→庁内報告」の3ステップで対応します。
  • 私的投稿を一律に削除させることは難しいため、まず任意の削除を求め、守秘義務違反や権利侵害がある場合は法務担当者・弁護士に相談します。
  • 懲戒処分は戒告・減給・停職・免職の4種類から、投稿内容や影響、自団体の基準、過去の処分との均衡を踏まえて決定します。
  • 再発防止には、ガイドライン・研修・モニタリングを整備し、炎上収束後も検索結果に残る情報への対処を続けます。

公務員のSNS投稿は、信用失墜・守秘義務・職務専念・政治的行為の4軸で確認し、匿名や勤務時間外でも慎重に判断します。

目次
  1. 公務員のSNS投稿はどこから「違反」になる?地方公務員法の根拠を整理
  2. 【発覚直後】初動対応の3ステップ|証拠保全・本人確認・庁内報告
  3. 懲戒処分の量定と「公表するか」の判断基準
  4. 再発防止と「ネットに残る影響」への対処
  5. よくある質問(FAQ)
  6. まとめ

公務員のSNS投稿はどこから「違反」になる?地方公務員法の根拠を整理

最初に押さえたいのは、公務員のSNS利用そのものは禁止されていないという点です。ただし、私的なアカウントでの投稿であっても、地方公務員法の複数の条文に触れる可能性があります。組織として対応を判断する土台になるため、根拠条文を先に整理しておきましょう。

条文の原文はe-Gov法令検索の地方公務員法で確認できます。

信用失墜行為の禁止(33条)|勤務時間外・匿名でも適用され得る

地方公務員法33条は「その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない」と定めています。職務と関係のない休日の投稿でも適用され得るのが、この条文の特徴です。

どこからが該当するかに画一的な基準はなく、千葉市の職員向けガイドラインFAQでは「社会通念に基づいて個々の場合について判断する」と整理されています。

判断の参考になるのが、総務省の国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たっての留意点です。信用失墜行為に該当し得る発信として、次の3類型を挙げています。

  • 職務の公正性や中立性に疑義を生じさせる内容の発信
  • 他人や組織を誹謗中傷する内容や、不快感・嫌悪感を起こさせる発信
  • 公序良俗に反する発信、差別的発言など他人の権利利益を侵害するおそれのある発信

国家公務員向けの文書ですが、地方公務員の私的なSNS利用ルールを考える際にも参考になる内容です。なお「匿名アカウントなら大丈夫」という認識は通用しません。投稿内容や写真の背景、フォロー関係の組み合わせから本人と所属が特定される「モザイクアプローチ」と呼ばれる手法があるためです。

民間企業で起きた不適切投稿の事例と対策はSNSの不適切投稿による炎上事例と対策にまとめています。

守秘義務・職務専念義務・政治的行為の制限|押さえるべき残り3条文

33条とあわせて確認しておきたい条文が3つあります。

  • 34条(秘密を守る義務)は職務上知り得た秘密の漏えいを禁じ、義務は退職後も続きます。違反には1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金という罰則もあります
  • 35条(職務に専念する義務)との関係では、業務上の利用や休憩時間などを除き、正規の勤務時間中に私的なSNS投稿を行えば、義務違反となる可能性があります
  • 36条(政治的行為の制限)は、政治的目的を持って行う一定の政治的行為を制限しています。SNS上の投稿や拡散が規制対象になるかは、投稿内容、対象地域、行為の態様などを個別に確認する必要があります

秘密の漏えいは、資料の写真が写り込むといった形だけでなく、窓口で対応した住民の情報をほのめかす「匂わせ」投稿でも問われ得ます。

人事院の「懲戒処分の指針」にSNSの標準例はない|判断は各自治体に委ねられる

国家公務員向けに人事院が定めた懲戒処分の指針に、SNS固有の標準例はありません。横浜市が公開する「懲戒処分の標準例」にもSNSの独立項目は見当たりません。少なくともこれらの基準では、投稿が秘密漏えいや信用失墜行為など、どの非違行為に当たるかを個別に判断する構造です。

自治体は自団体の基準も確認しなければなりません。だからこそ、発覚時の対応フローとガイドラインの事前整備が重要になります。

【発覚直後】初動対応の3ステップ|証拠保全・本人確認・庁内報告

職員の不適切投稿が発覚したら、やるべきことは3つです。①証拠の保全、②本人への事実確認、③庁内報告ラインの起動。投稿の削除はこの後です。慌てて削除させると、かえって対応が難しくなります。

炎上への一般的な対応の流れは炎上対応ガイドで解説しているので、ここでは自治体ならではの進め方に絞ります。

ステップ1:削除より先に証拠を保全する

まず、投稿本文・アカウント情報・URL・投稿日時・リポスト数などの拡散状況をスクリーンショットで記録します。後の懲戒手続で事実認定の根拠になるため、削除よりも保全が先。これが鉄則です。

前出の総務省の留意点も、一度発信された情報は削除しても第三者に保存され、半永久的に拡散し続けるおそれを指摘しています。削除は必要な対応ですが、削除すれば解決というわけではないのです。

ステップ2:本人への事実確認と削除要請|削除の可否は個別に判断する

証拠を確保したら、本人に投稿の事実・意図・経緯を確認し、記録を残します。この段階で弁明をきちんと聞いておくことが、後の懲戒手続の適正性につながります。私的投稿を一律に削除させる一般的な権限があるとは限らないため、まず本人に任意の削除を要請します。

ただし、守秘義務違反や権利侵害などが明らかな場合は、適法な職務命令の可否、SNS事業者への削除申出、裁判所への仮処分申立てなどを法務担当者や弁護士と検討してください。

ステップ3:庁内報告ラインの一本化|監督者の責任も問われる

所属長から人事担当課・広報担当課、必要に応じて首長まで報告ラインを速やかに起動し、対外的な窓口を一本化します。参考になるのが2013年の復興庁の事案です。

幹部職員による匿名アカウントの約600件の投稿のうち29件が違反と認定され(信用失墜行為6件・勤務時間中の投稿23件)、本人は停職30日、上司2名にも監督責任を問う措置が取られました。監督者の責任まで問われ得るからこそ、報告をためらわせない仕組みづくりが欠かせません。

懲戒処分の量定と「公表するか」の判断基準

懲戒処分は地方公務員法29条に基づく戒告・減給・停職・免職の4類型です。SNSという媒体だけで量定せず、投稿がどの非違行為に当たるかを自団体の基準に沿って判断します。公表の要否を検討する際は、人事院の懲戒処分の公表指針も参考になります。

戒告から免職まで|SNS事案の量定はどう決まるか

29条は懲戒事由として、法令違反、職務上の義務違反・職務怠慢、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行の3つを定めています。SNSの不適切投稿はこのいずれかに当てはめて量定されますが、実例を見ると処分には大きな幅があります。

事案処分
蕨市職員がX(旧Twitter)で複数の相手に中傷投稿(2018年・埼玉県蕨市)減給10%・3か月
無許可副業による停職中、旅行・外食写真をFacebookに投稿し、町の厳重注意後も再投稿(2016年・岐阜県池田町)懲戒免職。ただし、同年11月に公平委員会が処分を取り消し

SNS上の行為だけでなく、先行処分、注意後の再発、組織への影響などによって処分判断は変わります。

「重すぎる処分」は取り消されるリスク|相当性の原則

見落とされがちなのが処分の相当性です。行為の性質や影響、過去の処分例との均衡を欠いた過重な処分は、後に取り消されるリスクがあります。

先ほどの池田町の事案では、処分当初から免職は重すぎるとの指摘があり、実際に同年11月、揖斐広域連合公平委員会が免職処分を取り消しました。世論の厳しさだけで量定を決めると、審査請求などで処分が取り消されるリスクがあります。批判の火を早く消したい局面ほど、冷静な量定判断が求められます。

公表の判断と住民・議会・報道への説明

人事院の公表指針では、職務遂行上またはこれに関連する行為に対する懲戒処分と、職務に関連しない行為に対する免職・停職を公表対象としています。公表内容は、個人が識別されない形を基本とします。

地方公共団体では、人事院の指針だけでなく、各団体が定める公表基準も確認して判断します。自治体の場合、あわせて考えたいのは次の点です。

  • 住民への説明責任と、本人のプライバシーとのバランス
  • 非公表とした事案が後から発覚した場合の「隠蔽」批判のリスク
  • 広報窓口の一元化と想定問答の準備
  • 議会への報告のタイミング

公表は再拡散のきっかけにもなり得るため、時期と内容の設計まで含めて検討することをおすすめします。

再発防止と「ネットに残る影響」への対処

再発防止の柱は、ガイドラインの整備・研修・モニタリングの3点セットです。そして自治体の場合、事案が収束しても検索結果に痕跡が残り続けます。そこまで視野に入れてはじめて「対応完了」と言えます。

ガイドラインは「業務編」「プライベート編」の2本立てで|先行自治体の実例

浜松市のように、公式アカウントの運用ルールと職員の私的利用ルールを分けて示している自治体もあります。浜松市は「業務編」「プライベート編」の2本立てで、プライベート編には上司が部下にSNS上の「友達」関係を強要しないというハラスメント防止の規定まであります。

千葉市は私的利用に関するFAQを公開し、小諸市のガイドラインは「一度、インターネット上に公開された情報は完全には削除できない」と明記しています。

盛り込みたいのは、対象範囲(会計年度任用職員を含むか)、禁止事項、所属を名乗って発信する場合のルール、相談窓口の4点です。策定の考え方はSNSガイドライン・ポリシー策定の目的とはも参考にしてください。

研修とモニタリングで「知らなかった」と「気づかなかった」をなくす

ルールを作っても、読まれなければ機能しません。処分事例のケーススタディや、モザイクアプローチによる特定リスクを扱う研修を定期的に実施し、管理職には部下の投稿が発覚したときの初動も伝えておきたいところです。

当社のSNSリスクリテラシー研修は官公庁を含めて1,500名以上に受講いただいており、内容はSNSリスク研修は何をする?で紹介しています。

あわせて、自治体名や庁名を対象にした日常的なモニタリングがあると、問題投稿の早期発見につながります。監視ツールと有人監視にはそれぞれ特徴があり、有人監視サービスには24時間対応のものもあります。詳しくは企業の炎上対策監視とSNS監視をする必要性は?をご覧ください。

収束しても検索結果に残り続ける|デジタルタトゥーへの対処

私がブランドセキュリティ部門で検索結果の監視を担当していた頃、痛感したのは「炎上は収束しても、検索結果は元に戻らない」ことでした。「〇〇市 職員」と検索すると炎上関連の記事やまとめが並び続け、職員採用の受験者や移住を検討する人の目に触れ続けます。

やっかいなことに、組織からの削除要請や法的措置が「言論封殺」と受け取られ、再び批判が広がるケースもあります。拡散の規模、検索結果への波及、庁内の知見の3点を目安に、専門会社への相談も選択肢に入れてください。

当社には15年で5万件以上の対策実績(官公庁含む)があり、検索結果1ページ目を守る「ブランドSEO」の視点から、炎上後の中長期対応まで支援しています。デジタルタトゥーの基礎知識はデジタルタトゥーとは?で解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q: 勤務時間外や匿名アカウントの投稿でも懲戒処分の対象になりますか?

なり得ます。信用失墜行為の禁止(地方公務員法33条)は職務外の行為にも及びます。実際に、匿名アカウントの投稿が特定され停職処分に至った事例もあります。

Q: 職員に投稿の削除を強制することはできますか?

私的投稿を一律に削除させる一般的な権限があるとは限りません。まず証拠を保全し、本人に任意の削除を要請します。守秘義務違反や権利侵害などがある場合は、職務命令や法的手続の可否を法務担当者や弁護士に確認してください。

Q: 会計年度任用職員にも同じルールが適用されますか?

会計年度任用職員も地方公務員法の服務規定(信用失墜行為の禁止・守秘義務など)の適用を受けます。ガイドラインの対象範囲に含まれることを明記しておきましょう。

Q: 懲戒処分の内容は必ず公表しなければなりませんか?

法律上の一律の義務はありません。人事院の公表指針では、職務遂行上またはこれに関連する行為に対する懲戒処分と、職務に関連しない行為に対する免職・停職を公表対象としています。自治体では、各団体の公表基準も確認して判断してください。公表内容は、個人が識別されない形を基本とします。

まとめ

職員のSNS不適切投稿への対応は、初動(証拠保全・事実確認・庁内報告)、懲戒の量定と公表判断、再発防止(ガイドライン・研修・モニタリング)、そして検索結果への対処までが一つの流れです。

投稿内容や行為の態様に応じた個別判断が必要だからこそ、事前のフロー整備が自治体を守ります。

エルプランニングでは、官公庁を含む研修実績と15年の対策ノウハウをもとに、ガイドライン整備から炎上後の検索結果対策まで一気通貫でご支援しています。

「今まさに対応中」という場合も含めて、まずは無料相談をご利用ください。

監修者
清水陽平弁護士

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