誹謗中傷・風評対策

企業のための炎上対策|SNSの炎上パターンと具体的な対策案を紹介

企業のための炎上対策 SNSの炎上パターンと対策案を紹介

インターネットが普及し、誰でも自分のSNSアカウントを自由に作れるようになりました。個人アカウントでは、自分の考えた事や主張したい事をリアルタイムに全世界に発信する事が可能です。しかし、多くの人が利用するぶん、SNSの利用方法を間違え、多くのユーザーに指摘・拡散され「炎上」状態になってしまう人も多くいます。

また、そのようなリスクを負うのは個人だけではありません。企業や商品、さらには企業に所属する社員の不祥事などもSNSによって簡単に拡散され、炎上してしまう時代になりました。もしも、そのような炎上が起きたら企業にとっては売上も落としてしまうだけではなく、多くの人から信頼を失ってしまう事態となります。

本記事では、SNSの炎上パターンや炎上対策の必要性、具体的な炎上対策方法など、企業が十分なSNSの炎上対策をするために知っておきたい項目をまとめています。

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SNSの炎上パターン

SNSの炎上パターン
過去に企業のSNSが炎上した事例を見ていると、厳密に言えばそれぞれに共通する部分もありますが、炎上の理由は大きく分けて3つのパターンに分類する事ができます。今回はこの3つのパターンを軸にどういったふうにインターネット上で企業が炎上してしまうのか見てみましょう。

パターン①:企業のミスや不正によって炎上

まずは、企業が公式で発信したSNSでの投稿やCM・ポスターなどの広告が原因で炎上してしまうパターンです。これは、企業の発信したものの内容(話題)や表現の方法が大きく関わっています。

今まで企業が炎上してきた前例を踏まえ、企業が公式に発信したもので炎上しやすい内容をまとめると次のような項目に関係する内容が多くある事がわかります。

  • 宗教、人種に関わる内容
  • 性別、性差(ジェンダー)にかかわる内容

これらは総じて、何かを批判する意図はなくても、言葉の使い方や表現の方法によって「自分(または自分の大切にしているもの)を貶されている」などネガティブな捉え方をしてしまう層が存在してしまいやすい内容です。

宗教や人種に関わる内容というと、日本ではあまり馴染みがないためイメージが掴みにくい話題と言えます。例えばアメリカなど宗教(無宗教も含む)や人種に多様性のある国では、「Merry Christmas」という文言を企業広告において使用するのはキリスト教以外の宗教を信仰する人や特定の宗教を信仰していない人への差別だと指摘されてしまう恐れがあります。

そのため、企業広告では「Merry Christmas」ではなく「Happy Holidays」という言葉を使った配慮が行われています。日本国内での大きな炎上例はありませんが、とくにグローバルな展開を行う企業は宗教や人種を連想させる広告を扱う場合には気を付ける必要があります。

参考:この広告が、なぜ炎上したのかわかりますか | 「コミュ力」は鍛えられる! | 東洋経済オンライン
「メリークリスマス」の挨拶は万国共通でない | 実践!伝わる英語トレーニング | 東洋経済オンライン

とくに、近年「性別・性差(ジェンダー)にかかわる内容」の面で炎上するSNSが(企業公式アカウントに関わらず)増えてきています。人権や性別・年齢・容姿に関するCMや発言などがSNSで度々炎上しているのを見た事のある人も多いかもしれません。

実際に炎上したものの一例を挙げると、企業としては「女性を応援するCM」「子育て中のママを応援するCM」というコンセプトで出したものが、ターゲットであるはずの女性から猛批判を浴びSNSを中心に多くの苦情が殺到したというものがあります。こういった例は大手企業のCMを中心に多数記録が残っています。そして、これらは総じて(製作側の無意識的な)ジェンダーロールの押しつけによるものが原因と言えます。

多種多様な考え方が尊重されるべき現代において、「かつては常識とされていた考え方」「数年前までは問題視されていなかった発言」であったとしても、上記の2項目に当てはまる内容を取り扱う場合はとくに「考え方の押しつけ」になっていないか十分に注意して発言・発信すべきだと言えます。

炎上した後の対応ミスで更なる炎上を招く恐れも

さらに、SNSが炎上した際の企業の対応が不適切であったために、元々の規模より大きな炎上を招いてしまうといった事もあります。不適切な対応の例としては、企業のSNSが炎上してしまった際に、SNS担当者個人の判断で反論や言い訳をしてしまう事や、炎上が収まった頃に気を抜いてまた類似の間違いを起こしてしまう事などが挙げられます。

【炎上してしまった場合の対応ミスから二次炎上を招いた例】

  • 不適切な投稿が炎上した際、公式文書での謝罪などの対応なく当該ツイートを削除
  • 焦って対応したため、対応方法や公式文書にミスがあり、再び炎上
  • 公式文書や記者会見での謝罪に誠意がないととらえられてしまう

自社や自社の製品が炎上してしまったら、担当者にとっては、慌ててしまったり、虚偽の内容まで事実のように書かれてしまう悲しみを覚えたり、心無い言葉を様々な方向から投げつけられる怒りなどを抱いたりすることが予想され、判断力が鈍ってしまう状況に置かれてしまう場合もあるでしょう。しかし、ここでの対応によって企業への信頼の回復がどれだけ早まるかも決まります。

SNSにおける炎上は、炎上後の対策の素早さは大切です。しかし、アクションを起こす前にしっかり「なぜ炎上したのか」「ユーザーは何に対して怒りや悲しみを覚えたのか」「企業として信頼を回復するためにどのような対策を行うのか」といった点を確認して行動を起こす事も大切です。

パターン②:企業内の人間の告発やユーザーのクレームにより炎上

次に、企業内外のトラブルを個人のSNSや口コミサイトなどで告発し、共感した人によって拡散され、炎上するというパターンです。

告発した本人の発言から炎上する場合と、告発内容が投稿された掲示板や口コミサイトを見た第三者が「〇〇株式会社の口コミを見たけど、こんな酷い会社だったんだ」などといったコメントとともに該当の掲示板や口コミサイトのスクリーンショットを添付の上SNSに投稿し、その投稿が炎上するといった場合があります。
告発目的で作成されたX(旧:Twitter)アカウント
引用:運送会社を告発する目的で作成されたX(旧:Twitter)アカウント

また、X(旧:Twitter)では「〇〇を告発する会」といった内部告発を促すためのアカウントが開設される事もあります。こういった告発用のアカウントに賛同した元社員のユーザー達が集まり、現在でも社内の問題をリプライにて内部情報の暴露投稿が寄せられています。

一般のユーザーの投稿が原因で炎上した案件の中には、接客した店員の応対や食品を扱う企業の異物混入など商品サービスの不備を指摘するクレーム投稿が原因となる場合が多く見られます。

パターン③:個人アカウントの不適切投稿により炎上

こちらは近年のSNS炎上の中でも大きなニュースとして取り上げられたものが多いパターンです。「バイトテロ」「バカッター」「バカスタグラム」などの用語が有名になりました。

アイスケースに入った写真をFacebookに投稿したコンビニ店員や食器用の洗浄機に入った写真をX(旧:Twitter)に投稿して店を破産に追い込んだ蕎麦屋のアルバイト店員など、この手の炎上事件は過去5年間ほど遡ってみただけでも挙げたらきりがないほど多発しています。

パターン②とも重なる部分はありますが、パターン②は努めている会社のハラスメント行為や劣悪な勤務体系の暴露など、企業に対する悪意を持って「炎上させる」「多くの人に現状を知ってもらいたい」といった目的で投稿されているのに対し、このパターンは必ずしも企業を炎上させる意図があった訳ではない場合も見られるという所です。

24時間で消えるInstagramのストーリーズや各SNSの鍵アカウントへ「仲間内で見るため」に投稿した悪ふざけ動画が第三者によって画面録画され、X(旧:Twitter)の公開アカウントで「#バカッター」などとハッシュタグをつけて(※ハッシュタグをつけると検索が簡単になるため、多数の人に見られる確率が上がる)投稿されてしまうなどの手口で拡散される事があります。

ただ「目立ちたい」「有名になりたい」「悪ふざけをしてみたかった」などといった理由から行動してしまった場合が多く、どちらかといえば「身内向け」に投稿したものが、第三者のリツイートによって拡散され炎上してしまう、という状況が多く見られます。

こういった投稿の場合、炎上の矛先はもちろん投稿者本人に向きますが、殆どの場合で炎上した投稿者の勤める会社はすぐに特定され、勤務先の企業も「監督不行き届き」とみなされて炎上してしまいます。本来なら被害者であるはずの企業とはいえ、自社の売上や信用問題に関わる大きな問題として重く受け止めるべきであるのが現状です。

参考:なぜバイトテロは当事者が驚き、人生を棒に振るのか

個人のプライベートアカウントの炎上で勤務先企業までバレるのはなぜ?

前項で「殆どの場合で炎上した投稿者の勤める会社はすぐに特定される」と書きましたが、どうして個人のアカウントから勤務先がバレてしまうのでしょうか?

SNSを積極的に利用する世代は、個人のプライベートアカウント(とくにX(旧:Twitter)やInstagramなど)であらゆる日常の情報を投稿しています。その投稿の中には「勤務先付近の風景(カフェなども含む)」や「自撮り」などが含まれている場合も多くあります。

インターネット上には、SNSなどに掲載された僅かな個人情報をつなぎ合わせて、投稿した人物を特定する「特定班」等と呼ばれるような人がいます。本人特定の大まかな方法は、まずX(旧:Twitter)やInstagramなど「リアルタイムに更新されやすいSNS」の写真や発言、投稿時間から特定したい人物の行動パターンや行動範囲を把握します。

さらに、フォロワーとの会話なども利用して生年月日や名前の候補を割り出します。自撮り写真などを掲載していた場合はこの時点で人物の顔も特定されます。「特定班」の中には、自撮り写真のサングラスやメガネ、さらには「眼」に写った風景から撮影場所を特定できる人もいます。そのようにして得た情報を使ってさらに詳しい情報を拾い、本人特定までたどり着くのです。

SNSでの発言を「個人の独り言」のような用途で使っている世代は少なくありません。よって、SNS上で自分の勤務先(会社の立地などヒントになり得る情報も含めて)を無意識的に呟いてしまっている場合もあります。個人のSNSが炎上し、「特定班」と呼ばれる人達が動くと、特定の際に本人のパーソナリティーの一環としてこういったSNSの小さな情報が拾われ、勤務先の企業がバレてしまうのです。

参考:瞳の反射景色だけじゃない!SNS投稿写真から特定される驚愕手口とは!? (2019年10月13日) – エキサイトニュース

過去に企業を襲ったSNSの炎上事例

過去に企業を襲ったSNSの炎上事例
過去に企業がSNSで炎上したニュースなどを見てみましょう。ここに挙げるのはほんの一例ですが、「炎上」に会社の規模感や業種は関係なく、どの企業にも起こり得るものだということがわかります。

企業公式X(旧:Twitter)を使い従業員が社内の不満を吐露した事例

多くの人がX(旧:Twitter)のアカウントを所持するようになり、インターネットを気軽に利用する層にアプローチするために企業も「企業公式アカウント」として会社やサービスの宣伝のためにX(旧:Twitter)を利用するようになりました。

企業公式アカウントは基本的に宣伝や顧客フォローを目的としていますが、企業によっては宣伝の一環として親近感を持ってもらうためにユーザーや他の企業の公式アカウントと日常的なやりとりを行うアカウントもあります。そういったやりとりを行うアカウントは運用者の個性も見えるため、運用者はユーザーから「中の人」と呼ばれ一定のファンがつく場合もあります。

2019年、フォロワー数2200人を抱える、とある印刷会社の公式Twitterの「中の人」が社長から「お前のやっていることは仕事でもないし、すべて無駄」といった趣旨の発言をされたと企業公式Twitterへ投稿し、アカウントを削除するという事件がありました。

この件に関しては、後に「Twitterの運用方法や運用の結果が会社の意向に沿っていなかったために会社としてSNSでの宣伝活動は行わないという方針に決まった」と公表され、納得したユーザーも多かったため深刻な炎上には繋がっていません。

しかし、多数のフォロワーを抱えた企業の公式X(旧:Twitter)で私的に「会社に関するネガティブな発言をされてしまう場合がある」という一例としては十分に参考になる事例と言えるでしょう。「ネガティブな発言」の信ぴょう性や「読んだユーザーが会社に対してどのような印象を持ったか」によっては、企業の信用を失墜させるような大きな炎上に繋がる恐れもあります。

こういった事例の他にも、元従業員の家族が会社名を仄めかした上で「退職理由が会社からのハラスメント行為であった」旨を投稿し炎上した事態など、投稿者が企業の体制に不満を持った本人ではない場合もあります。

参考:企業ツイッター、社長が「今すぐやめろ」 「中の人」不満吐露も…取材でわかった「事情」

芸能人の来店情報を従業員の家族がSNSに投稿した事例

2015年6月8日、Twitterにあるアイドルグループのメンバーの銀行来店情報が流出した事件がありました。ツイートしたのは20代の女性で、彼女は銀行員である母親から芸能人の個人情報を聞き、SNSに情報をツイートしたという事です。他にも、そのアイドルグループのメンバーについて「住所をざっくりと教えてもらった」「母が帰ってきたら情報たくさん聞こう」などともツイートしており、「プライバシーの侵害」行為と指摘され瞬く間にリツイートされていきました。

それから数時間も経たないうちに当該女性はこの件以外にも有名俳優の運転免許証のコピーを受け取ったり、別の芸能人と担当マネージャーの来店情報についても母親から聞いていたりした事実がフォロワーとの会話内容から発覚。それだけではなく、問題を起こしたアカウントとは別に作成した鍵付きのアカウントも即座に特定されてしまいました。

参考:銀行で芸能人の個人情報が漏洩–なぜ若者はTwitter炎上を起こすのか

炎上してしまった場合は早期の対策が重要になる

炎上してしまった場合は早期の対策が重要になる
上記の銀行員とその娘による芸能人の個人情報流出事件に関して、該当の銀行は事件が発生したその日中に公式ホームページにて事実の確認と謝罪文を公式掲載しました。約6時間というスピードでの対応となりました。

個人情報流出に対する謝罪ツイート

引用:当該銀行の公式Twitter(2015年6月8日 22:53 投稿)

こちらのツイートには批判のリプライが殺到し、株価も暴落したものの、「思ったよりも対応が早かった」といった旨のリプライもついており、誠実な謝罪を伝える公式文書の掲載といった信頼回復のための速やかな対応は少なからず評価されていると言っても良いのではないでしょうか。

もちろん、「炎上した後の対応ミス」の項目でもお話したように、ただ「対応が早ければ良い」というものではありません。素早く、かつ企業として誠意をもって適切な対応を取るにはどうすれば良いかという対策方法については、また後の項目で説明します。

SNSの炎上対策をできている企業はどのくらい?

SNSの炎上対策をできている企業はどのくらい?
防火や防犯に焦点を当てたリスクマネジメントは、過去の経験を元にリスクを回避するために、その原因となった事象を暴き対策を講じるといった動きが基本にありました。

しかし、SNSの炎上対策においては、その発生率の高さを鑑みても、「原因となった事象を暴き対策を講じる」という動きとともに「被害による影響を最小限にする」ための動きや対策も重要となります。

以前、経済産業省が掲載した「中小企業のリスクマネジメントと信用力向上に関する調査報告書」という資料によれば、調査の時点でリスク管理を担当する専門部署を置いている企業は大企業(従業員規模301人以上)でも15.4%。小企業(従業員数11人以上50人以下)程度の規模になると1.5%に留まっていることが確認されています。

参考:経済産業省 中小企業庁 事業環境部企画課調査室「平成27年度中小企業のリスクマネジメントと信用力向上に関する調査報告書」(PDF)

企業が準備しておくべきSNS炎上対策の具体案

企業が準備しておくべきSNS炎上対策の具体案
具体的なSNSの炎上対策方法として、「ソーシャルメディアガイドラインや炎上対策マニュアルの策定」「インターネットでの炎上に関する社内研修」「SNS監視ツールや有人監視の導入」がおすすめです。これら全てを網羅するのが理想的ではありますが、会社の規模や予算なども考慮して部分的、または段階的に取り入れていくのも良いでしょう。

それでは、それぞれの対策方法について詳しく見ていきましょう。

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SNS利用のルール:ガイドラインやマニュアルを策定する

SNSでの炎上は初期の対応を適切に行う事が大切です。もしもSNSが突然炎上してしまう事があっても、事前にソーシャルメディアの利用方針やガイドライン、リスク対応の体制が整っていれば慌てずに対処へ移ることができます。

ソーシャルメディアガイドラインでSNS利用についての指針を定める

ソーシャルメディアガイドラインとは、企業の公式SNSなどを運用するにあたって、社内から炎上の火種を撒かないように「全体で共有しておくべき行動指針」をまとめたものです。

ガイドラインを策定する際には、大きくまとめて以下の9つの項目はしっかり網羅するようにしましょう。

【ソーシャルメディアガイドライン|9つの必須項目】

  1. 個人情報・プライバシーの保護
  2. 機密情報や知的所有権の保護
  3. 第三者の権利の尊重と保護
  4. 透明性の確保
  5. 誹謗中傷の禁止
  6. 避難を受ける技術利用の制限
  7. 自己責任の明確化
  8. 第三者へ経緯を払う傾聴の態度
  9. デジタルツールとしての特質の理解

参考:ソーシャルメディアポリシー・ガイドライン策定 | 誹謗中傷対策ならネット情報参謀セイメイ

こういったSNS利用の注意事項をまとめたルールブックを作成し、全社員が共有する事で、企業の公式SNSはもちろん、企業では統制できない個人のSNS利用についてもある程度正しい認識を持ってもらう事が可能になります。

SNS炎上対策マニュアルを策定し、炎上の際の動き方を共有する

さらに、リスク対応の体制を整えるために炎上対策マニュアルの策定も有効です。炎上対策マニュアルは、SNSで炎上が発生してしまった際に、企業がどういった動きを行って炎上の沈静化に努めるのかを記したマニュアルの事を言います。

実際に炎上が発生してしまった時は、何度も言うように「対応が早ければ良い」訳ではありません。さらに言えば、SNSの担当者や炎上してしまった原因となる部署が個別に対応するのではなく、会社全体で炎上を認知し、それぞれの部署が協力して炎上に対応していかなければなりません。あらかじめ対応のフローや手順が決まっていれば、万が一の時でも企業が一丸となって対応し、早期解決に向かう事ができます。

こういった企業用のソーシャルメディアガイドラインや炎上対策マニュアルは、もちろん企業内で策定する事も可能ですが、企業の管理体制を客観的に見た上で適切な措置を取り入れるためにも、SNSの炎上対策に詳しい業者のコンサルティングを受けて策定する方法もあります。

ネット炎上の防災訓練:インターネットでの炎上に関する社内研修を行う

さて、炎上対策のためにソーシャルメディアガイドラインや炎上対策マニュアルを策定することが有効だと先ほど説明しましたが、その運用方法をしっかりと把握しておく事も同時に大切な事と言えます。

策定したガイドラインやマニュアルの有用性を確認し、想定した炎上時の動きに問題がないか確認するために、SNSの炎上に対する社内研修を行う事も炎上対策の一環としてとても有効な試みと言えます。

社内研修を行い、実際に企業のSNSや個人のSNSが炎上してしまった場合を想定したケーススタディを行う事で、どうしても「他人事」と捉えてしまいがちなSNSの炎上を「誰にでも起こり得る事」として再認識してもらうという狙いもあります。

SNSの監視:ツールや有人監視で火種を素早く発見できる体制をつくる

最後に、本記事内でも「SNSの炎上は早期の発見が大切」である事を説明しましたが、そのために炎上の火種を発見できるシステムを作っておきましょう。

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自動監視ツールを導入するメリット

SNSの自動監視ツールは、提供している業者ごとに様々な特徴はありますが、基本的な構造は「検索ワード(自社名や商品名など)」と「風評とみなすワード(ブラック・詐欺など)」を登録し、そのワードが組み合わさった投稿が出現した際にメールのアラートなどで危険を知らせるようなもの、とイメージすると分かりやすいと思います。

自動監視ツールの大きなメリットは、

  • ひとつのツールでSNSだけではなくサジェストなど他の風評リスクのある場所の監視も可能なものが多い
  • ツールを見ていない時間帯でも、「検索ワード」と「風評ワード」の組み合わせが投稿された際はメールなどで知らせてくれる
  • 様々なSNSやサイトをわざわざ見に行ったり何度も検索用のキーワードを打ちなおしたりする必要がなく、目視確認の時間が短縮できる
  • 一定期間の「検索ワード」を伴った投稿の内容を確認できる
  • 有人監視サービスに比べて費用が安く、導入へのハードルが低い

ただし、欠点として「検索ワード」と「風評ワード」の組み合わせを拾うため、「炎上の恐れがある」と拾われた投稿が実は全く風評ではなかったり、逆に登録したワードの表記ゆれなどの問題で炎上のリスクがある投稿を逃してしまったりする場合がある事は注意しておきましょう。

自動監視ツールを導入する際は、ツールでの自動確認と簡単な目視での確認を平行して行うのが効果的です。一般的な自動監視ツールは「検索ワード」を含むSNSへの投稿を定期的に取得しているため、色々なサイトを行き来しなくてもツール内で目視確認が出来ます。

有人監視サービスを導入するメリット

一方、SNSの有人監視サービスは、監視に関する一連の作業を、専門の業者に全て委託してしまうというものです。

有人監視サービスを導入するメリットは、

  • 転職系口コミサイトやレビューサイトなど自動監視ツールでは監視不可能な場所も監視することが可能
  • 監視を専門にしているプロが目視を行うので、炎上のおそれのある投稿を抽出する精度が高い
  • 業者によっては「24時間監視」や「3時間毎の定点監視」などを実施しており、炎上してしまった際でも早期に発見できる
  • 作業を委託会社に丸投げできるので、自社の社員の時間を有効に使える

有人監視サービスは自動監視ツールに比べて監視の精度が高いだけではなくサポートも手厚く、監視の結果をレポートなどにまとめて報告してくれる業者もあります。監視先のサイトはSNSに限る所ではなく、相談次第ではツールで監視できないサイトの監視も引き受けて貰える場合もありカスタマイズ性も高いと言えます。

その分、自動監視ツールに比べるとどうしても価格が高くなってしまうというデメリットはあります。有人監視サービスを導入する際はコストパフォーマンスを踏まえ、自社の社員で監視作業を賄う場合とどちらが自社にとってメリットが大きいのかを考慮すると良いでしょう。

株式会社エルプランニングでも有人監視サービスを取り扱っておりますので、ぜひ参考にしてみてください。

まとめ|SNSの炎上対策は万全に!万が一の炎上でも素早い対応を行える体制作りを

SNSの炎上対策は万全に!万が一の炎上でも素早い対応を行える体制作りを
インターネット、とくにSNSでの炎上は、どれだけ発信する側が気を付けていても炎上のリスクを「ゼロ」にするのは難しいでしょう。しかし、炎上のリスクを保有したまま何もせず放置しておくのと、インターネットを利用するにあたって「炎上は必ず起こり得るもの」と認識し、予め予防や対策をしておく事には大きな差があるというのは間違いありません。

まずは、普段からSNSなど多くのユーザーが閲覧するサイトで自社についてどういった投稿がされているのかを把握する所から始めましょう。低予算でも監視ツールなどを利用すれば効率よく自社の評判を知ることができます。

また、企業におけるSNSの炎上は、企業の公式アカウントを扱う担当者だけが気を付ければ良いものでもありません。個人のプライベートアカウントが炎上した場合、勤務先として企業が炎上するといった例や、「バイトテロ」と総称される、企業に属している人間が個人アカウントに勤務中の不適切投稿を流してしまう例など多数の炎上のパターンがある事を踏まえ、企業に関わる全ての人間がSNS利用について学んでおく事も大切です。万が一炎上してしまった場合に備えて、炎上時の企業全体としての動き方を定期的に確認し、時代に合わせた対策法を用意しておきましょう。

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監修者
法律事務所アルシエン 共同代表パートナー

清水 陽平

清水陽平弁護士
2007年弁護士登録(60期)。2010年11月法律事務所アルシエンを開設。ネット中傷の削除、投稿者の特定、炎上対応などインターネット分野の法律問題に取り組んでいる。総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022年~)の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を務める。